無縁・公界・楽
2014-12-23


近世の歴史に関する本ばかり読んできて、やはりその前の時代の中世も気になる。いろいろあるが、著名なところから。

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網野善彦氏の「無縁・公界・楽」。近世史で読んできた朝尾直弘氏の著述が、事実を積み上げていってそこから否応なく見えてくるものを提示する、という体であるのに対し、こちらは、多少なりとも直感的に結論につれていき、その上で様々な論拠を提示する、という体裁。論文集ではなく、一般向けの本であるためかもしれない。ただ、直感が告げる感覚を読者にも届けたい、という思いがあったのではないか。

読み終わっての印象は、中世はずいぶん遠い、それだけに織豊と徳川が乗り越えなければならなかった壁もよほど高かったろう、遠いはずの江戸がむしろ近くに思えるくらい。確かにいまに通じる感情もあるのだろうが、いまの感覚で理解した気になるのは大きな誤り。

ものの本によると、江戸時代に生産力が大きく伸びる前の日本の人口は一千万人程度。その前の中世期は、五六百万人前後。いまの二十分の一程度とすれば、集落の間には人の住まない場所が大きく広がり、交通や通信手段も限られたとなれば、ずいぶんと人の思いや考えることは、いまと大きく異なっていたはず。想像しろ、といわれても難しい。しかし、この本は、それに向き合え、と言ってくる。

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