The Raw Shark Texts
2017-10-31



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Steven Hallの著作。奥付によると、2007年に英国での発行。2011年4月にKindle版を購入。

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SFマガジンの2011年4月号の海外小説紹介ページで取り上げられていた。それを見て、すぐに購入した様子。紹介されていたのは、角川から翻訳されたもの。SFかというとどうかな。

邦題の「ロールシャッハの鮫」はどこから出てきたものかわからないが、「The Raw Shark Texts」を字義通りに訳すと、獰猛な鮫の物語、とでもなるか。手許の英和辞典では、rawにちょうどいい訳がないが、Websterを見ると、powerful and not controlledとあるのがちょうどいい。実は、この鮫は、文字世界の住人なので、文字面で構成された鮫と取ることもできる。

物語の冒頭、主人公のEric Sandersonは、記憶の大半を失った状態で目覚める。精神科の主治医によると、この目覚めを繰り返しているらしい。伴侶は、猫のIanのみ。そのうち、初代の自分からのメッセージをたどることになり、文字世界の鮫との出会いを経て、記憶を取り戻す旅に出る。旅は、予想を裏切り、波乱に満ち、読み手を度々裏切る展開。

さて、鮫は文字世界、概念世界の住人。現実の鮫と同様、食餌への執念はすさまじく、ただし、彼の食餌は人の記憶であり情報そのもの。食われることは記憶を奪われること。度々襲われることになるが、描かれた文字絵が、ページを繰る度に接近する様子は、なんとも言えない迫力。文字絵は要所要所で用いられ、大きな効果を上げている。

物語は、Kindleの進捗でいうと90%くらいのところで結末を迎える。残りは、索引。原文では、indexならぬundex。ここにも文字遊びが効いている。

これでKindleの積ん読は解消。さて、次へ。

P.S.
著者が自書を紹介するYouTubeを見ると、タイトルは、ロールシャッハテストと音感を掛けているといっていました。
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